【徹底解説】選手を支えるレース用の車いす

車いすマラソン競技の質の向上は目を見張るものがある。
それを支えているのがレース用車いすである。

ここではレース用車いすの進化と性能について述べていきたい。

レース用車いすと一般的な車いすの違い

一般的な車いすは後方の大きな車輪と前方の小型車輪の4輪である。
それに対して、レース用の車いすは3輪で縦に長い形状である。

先頭から最後部までの長さは1.8メートルほどある。
一般的な車いすには足の置き場がある。

しかし、レース用車いすにはそれがない。
選手は正座した状態で車いすに乗り込む。

また、レース用車いすには一般的な車いすにはない機能がある。

前輪にブレーキと進行方向を制御する機能がついている。
前輪には「トラックレバー」という部品が付属していて、この「トラックレバー」を操作してコーナリングをおこなう。

一般的な車いすでは、絶対に曲がれない角度のコーナーを凄まじい速さで曲がることができる。

理由は前述した機能があるからだ。
一般的な車いすでそのような動作をおこなえば、コーナーに侵入した瞬間に車体が傾いて横転するだろう。

レース用車いすの進化

「レース用車いす」素材の軽量化

一般的な車いす、レース用の車いす、どちらも軽量化が進んでいる。
チタン製の車いすが市場に現れた時、「軽くて丈夫だ!」

その性能のすばらしさに多くの車いすユーザーは感動した。

しかし、それを超える素材が出てきた。
カーボン素材である。

昨今、レース用車いすにはカーボン製が多く使われるようになってきている。

どれほど違うのかはプラスチックと金属を比較すると分かりやすいだろう。
カーボンはプラスチック、チタンは金属である。

どちらが軽いかは一目瞭然。しかもカーボンはチタンと同等の強度があるのだ。

「レース用車椅子」フレームの進化

初期のレース用車いすのフレームは細身のパイプをはしご状に組み合わせていた。
現在の「太い1本のパイプを使った形状」とは違うため、耐久性と強度が現在よりも低かった。
3輪の乗り物でコーナーを曲がった場合、車体には必ずねじれが発生してしまう。

部品をつなぎあわせるような形状の場合、接合部にストレスを受けてしまう。
また、振動も多くなる。
それではマシンの耐久性はもとより、選手のパフォーマンスも低下してしまう。

その欠点を技術者と選手の試行錯誤で乗り越え、現在の形にたどりついたのだ。
現在のフレームはコーナリング時にしなってくれるので衝撃を吸収してくれるので選手への負担も少ないのだ。

レース用車いす開発メーカーと歴史

株式会社 oxエンジニアリング

「車いすメーカー」と聞くと、最初に思い浮かぶのはoxエンジニアリングである。筆者の足としても活躍している。

株式会社oxエンジニアリングを創業したのは石井重行氏である。
彼自身も車いすユーザーである。

1984年にバイクの事故で脊髄を損傷してしまう。
その時に既存の車いすは「自分が乗りたい」と思うものがない。
そのように思い、車いす製作を開始する。

「自分が乗りたい」と思う車いすを作ったことが始まりなのだ。
やがてその会社が、日本有数の車いすメーカーになるのだ。

石井氏は障害者スポーツ用の車いす開発も熱心におこなった。
レース用の車いすではないが、国枝慎吾選手の競技用車いすもoxエンジニアリングが提供しているものだ。

本田技研工業

2000年に本田技術研究所がレース用車いすの開発に着手する。
別府にある障害者施設「太陽の家」の就労施設「ホンダ太陽」。

そこの従業員が立ち上げた「車いすレーサー研究会」からのフィードバックを受けて開発を推進。

ホンダ太陽が本田技術研究所の技術開発支援を受け、世界初のフルカーボンボディのレース用車いす「試作車1号」を完成させる。

その後も試行錯誤を繰り返し、確実に性能を上げていった

2013年にはホンダ太陽、本田技術研究所に加えてホンダ傘下の自動車部品メーカー「八千代工業」が開発に加わる。

3社共創体制となったことで、カーボンフレームを採用したレース用車いす「極」の量産体制が確立された。

そして翌2014年、八千代工業から量産モデルの「極<KIWAMI>」を販売開始。

さらに翌2015年には、マイナーモデルチェンジを行った「挑<IDOMI>」の生産販売が開始された。

2019年の4月にはこれまでの技術の粋を結集した「翔<KAKERU>」を製作。これは「カーボン製モノコックフレーム、フロントフォーク、ディスクホイール」といった画期的な技術を採用した。

これまでにないフレーム形状とステアリング機構を採用。
トップアスリートたちの持てる能力を最大限に引き出す事を可能にした。

レース用車いす まとめ

昨今のレース用車いすの進化は目を見張るものがある。

ダイナミックなコーナーリングは技術の進歩がもたらしたものである。
平均的なスピードも着実に上がり、タイムもますます好記録を出している。

これからも技術は進歩し、パラアスリートを支えてくれるだろう。
前述した企業のみならず、多くのメーカーが車いす製作に乗り出している。
好ましいことである。

切磋琢磨してよりよい製品を投入していただきたい。
それは障害者の生活向上につながるのだから。

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